老人ホームや介護施設でリハビリを行うイメージの作業療法士。意外と書類仕事が多いという噂もあります。
しかし、「リハビリは大変?」「理学療法士と何が違うの?」など、作業療法士に関して疑問を感じていませんか?
そこで今回は、
- 作業療法士の仕事内容・働き方・給与は?
- 作業療法士のやりがい・苦労・向いている人の特徴とは?
- 未経験から作業療法士を目指す方法
についてご紹介します。
作業療法士に興味がある、転職したいとお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。
作業療法士の仕事内容・働き方・給与は?
そもそも作業療法士がどのような仕事で、どんな働き方をしているのかご存知ですか?はじめに、作業療法士の「仕事内容」「働き方」「給与」についてご紹介します。
作業療法士の仕事内容
作業療法士の仕事は、心身に障害のある人が社会適応できるようリハビリを行うことです。
英語では「Occupational therapist」で、略して「OT」と呼ばれ、主なケアの対象は3つ。
- 基本的動作能力:トランポリン、滑り台、体操など
- 応用的動作能力:食事、着替えなどのセルフケア、金銭管理、コミュニケーション管理など
- 社会的適応能力:計算、パソコン操作、公共交通機関の利用など
理学療法士が「歩く」「座る」などの基本動作を回復させるのに対して、作業療法士はさらに一歩先の支援を担当。レクリエーションや創作活動などを通じて、社会に適応できるよう心と身体のリハビリを行います。
作業療法士の働き方
続いて、作業療法士の勤務形態・休日・残業など、働き方についてご紹介します。
勤務形態
作業療法士には基本的に夜勤はなく、日勤で働けるため生活のリズムを作りやすいです。ただし、早出や遅出を行って、患者さんの朝食や夕食、着替えや入浴などのリハビリを担当することも。また、病院では365日対応が必要なため、シフト制で勤務するケースが多いです。
休日
作業療法士の休日は、職場によって異なります。病気になりたての患者さんや、発症後1~2か月の、リハビリが最も有効な期間の患者さんがいる病院では、土日祝日もシフト制で勤務することが多いです。
一方、病状が安定している介護施設や老人ホームでは、土日休みのケースも。また、休日に研修や講習会に参加することもあります。
残業
作業療法士の残業時間は平均5時間と、それほど多くありません。ただし、書類作成など事務作業に慣れていない場合は残業が発生しがちです。それでも、1日のスケジュールが決まっているため、仕事に慣れることで徐々に残業時間を減らしていけます。
作業療法士の給与・年収は?
作業療法士の平均年収は427万円と、日本の平均年収467万円と比較するとやや低い水準です。
作業療法士の年収が低い原因のひとつは、作業療法士の数が増えて、市場の需要より供給が多くなっていること。求人の数は限られているため、作業療法士の給与は低くなりがちです。また、夜勤や長時間残業がないため、手取り額が低く抑えられていることも影響しています。
参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査(順次掲載予定) 一般労働者 職種 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口 (e-stat.go.jp)
作業療法士のやりがい・苦労・向いている人の特徴とは?
残業が少なく生活リズムを作りやすい作業療法士。一体どんなやりがいや苦労があるのでしょうか?ここからは、作業療法士の「やりがい」「苦労」「向いている人の特徴」についてご紹介します。
作業療法士のやりがい
作業療法士のやりがいは、リハビリを通じて、患者さんに自分らしい生活を送ってもらえるようサポートできることです。
患者さんはこれまでできていたことができなくなり、家族の助けを借りて生活しているケースも多いもの。そんな中、リハビリを通じてできることが増えていくと、段々と自分らしく笑顔で生活してもらえるようになり、豊かな生活をサポートできた喜びを感じられます。
例えば、足が痛くてうまく立ち上がれない患者さんのケースを見てみましょう。「手すりを持たずに自分で立ちたい」という希望に沿って、歩きやすい動作を一緒に練習。
結果的に患者さんが自分の力で立てるようになり、「できるようになった!」という喜びの声を聞けた時には、作業療法士としての達成感を得られます。作業療法士は患者さんの気持ちを大切にし、自分らしい生活を取り戻してもらうサポートができる、充実感のある仕事です。
作業療法士の苦労
作業療法士の苦労は、患者さんの「なりたい姿」をヒアリングするのが難しいことです。
患者さんの抱える問題は人それぞれ。どんなことができるようになりたいか、どんな問題があるかを具体的に聞き出せないと適切なリハビリができません。
例えば「料理ができない」という患者さんのケース。抱えている問題が、「包丁が使えない」という肉体的な問題なのか、「火が怖い」という心理的な問題なのかはヒアリングしてみないとわかりません。
ところが、患者さんご本人も原因を自覚していないケースがあるため、患者さんやご家族と何度も会話を繰り返さないと本当の原因に辿り着けないことも。作業療法士の苦労は、「患者さんの抱える問題の本質」を聞き出すのが難しい苦労のある仕事です。
作業療法士に向いている人の特徴
作業療法士に向いているのは、相手の立場に立ってじっくり物事を考えられる人です。
緊急性の高い処置を行う看護師と異なり、作業療法士は患者さんとの間に時間をかけて信頼関係を築き、リハビリを行っていきます。相手の立場に立って考えられないとしっかりコミュニケーションがとれず、適切なリハビリは難しいものです。
例えば、外に出るのが怖いという患者さんに対して、強引に外に連れだすのが正解とは限りません。「どうして外に出られないのか」を患者さんへヒアリングし、一緒に問題に取り組むのが大切です。じっくり時間をかけて、外が怖い原因を取り除き、健康的に外に出られる方法を考えることが求められます。
作業療法士は、せっかちにならず、患者さんとじっくり向き合うのが得意な人に向いている仕事です。
未経験から作業療法士を目指す方法
ここからは未経験から作業療法士を目指すために「必要な資格・役立つスキル」「自己PRポイント」「よく質問される内容」を解説します。ぜひ転職を検討中の方は参考にしてみてくださいね。
作業療法士に必要な資格・役立つスキル
必須資格 |
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作業療法士国家試験 |
■受験資格:作業療法士の養成学校で3年以上学ぶこと ■合格率:約80% |
あると役立つスキル |
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観察力 |
患者さんのやりたいこと、気持ちを表情やしぐさから察する力 |
作業療法士になるには、作業療法士国家試験に合格することが必須です。作業療法士国家試験の受験資格は、作業療法士の養成学校で3年以上学ぶこと。合格率は直近では約80%で、ここ5年ほどで見ると70%以上となっています。そのため、しっかり学習を進めれば合格は難しくありません。
また、あると役立つスキルは観察力です。作業療法士は患者さんの気持ちを重視してリハビリを行うのが大切な仕事。ところが、自分の言葉で気持ちを伝えるのが苦手な患者さんも多いものです。
そのため、患者さんのやりたいことや気持ちを、ちょっとした表情やしぐさから読み取る力があれば、患者さんの希望に沿ったリハビリ計画を立てられます。
参考:第57回理学療法士国家試験及び第57回作業療法士国家試験の合格発表について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
作業療法士になるための自己PRポイント
未経験から作業療法士を目指すためには、観察力があることをアピールするのがおすすめです。
作業療法士は、心身の調子が万全でない患者さんを相手にリハビリを行うため、患者さんのやりたいことを察したり、体調の急変を察するための観察力が求められます。
例えば、前職で業務改善に成功したエピソードをアピールした場合はどうでしょうか。解決すべき課題を自分で発見し、解決に繋げられたと話せれば、採用担当からは観察力があると判断してもらえます。
作業療法士を目指す時には、これまでの経歴を通じて観察力を発揮したエピソードをアピールするのがおすすめです。
作業療法士の面接でよく質問される内容
作業療法士の面接では、どんな質問をされるのでしょうか。よくある質問をいくつか見てみましょう。
例①:どうして作業療法士を選びましたか?
作業療法士の面接では、よく似ている職種である理学療法士と比較して、「どうして作業療法士なのか」を問われることがあります。そのため、仕事内容の違いをしっかりと把握し、作業療法士が良いと思ったポイントを具体的に語るようにしましょう。
例②:どんな作業療法士になりたいですか?
採用担当は、作業療法士になりたい熱意や真剣度を見極めるために、「なりたい作業療法士」像について質問することがあります。そんな時は、志望先が求める人物像に沿って、自分の強みを語れるようにしましょう。
例③:勉強するのは好きですか?
作業療法士は一度試験に合格しても、リハビリ技術の進化に伴い日々勉強を続けなければなりません。日頃から勉強会などへ参加することも必要になるため、勉強を続けるのに抵抗感がない姿勢をアピールしましょう。
まとめ
今回は、作業療法士の仕事内容から転職方法まで詳しく解説してきました。作業療法士は患者さんの気持ちを汲み取るのが大変なものの、リハビリを通じて患者さんらしい生活のサポートができた時には大きな達成感を得られる仕事です。
相手の立場に立ってじっくり物事を考えるのが得意な方は、ぜひ作業療法士にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。良い転職活動になることをお祈りしております!